第3回講義資料 2009/10/02

コンピュータの歴史1
大型計算機の生い立ち 〜 誕生から共通アーキテクチャの考え方まで

前回の講義内容
  • 計算の原理
  • シンプルなコンピュータ
  • コンピュータの命令
  • アドレッシング
  • ワード(語)
  • 入出力の手段
今回の講義内容
  • 60年前にコンピュータ生まれる
  • 初期の研究開発の歴史
  • 商用コンピュータの登場
  • リレー式、真空管式、トランジスタ式
  • 日本のコンピュータ開発
  • IBM360シリーズの意義
  • アーキテクチャとシリーズ
60年前にコンピュータ生まれる
  • 世界最初のコンピュータは?
世界最初のコンピュータはというと多くの本にはENIAC(Electric Numeric Integrator And Computer)と書いてありますが、実際は多くの研究がその同時期になされ、さまざな実験がなされていました。
  • 何をもってコンピュータ呼ぶか?
汎用的なコンピュータ以外にも暗号解読や集計機等、コンピュータと似たプログラミング機能をもつ計算機が開発されていました。何をもってコンピュータと呼ぶかは難しい点ですが、汎用的な計算プログラムが可能な機械をそう呼ぶことにします。
  • 何の最初なのか?
コンピュータは単一の技術で成り立ってはいません。メモリの技術、演算素子の技術、コンピュータの原理/構造、さまざなな技術の集大成です。この時期開発されたコンピュータやそれに準ずるものには、それぞれの世界初が盛り込まれています。その点に注意して歴史を見て行くといいでしょう。
  • 研究のレベル、実用レベル?
この時期のコンピュータには実験用に組まれた機械。実際に何年か稼働して実際の利用目的を達成したものなど、規模もさまざまです。ENIAC, EDSAC, EDVACなどは実際に数年稼働をしています。一方、ABCマシンは実際に稼働しなかったという話もあります。

ENIAC
  • 真空管式の計算機(電子計算機)
    • 約 18,000 本
ENIACは真空管を中心につくられていました。当時はまだ半導体はありませんから、機械式でないコンピュータといえば真空管です。真空管はヒータで電極を加熱する必要があり、そのヒータの断線は故障の大きな原因でした。よくENIACは故障が多くほとんど故障をしていたという話がありますが、実際は90%の稼働率だったようです。実用ぎりぎりまで電圧を落として動かすなど、耐久性を重視した手法を使い、十分に実用になるレベルであったが、後に電源を頻繁に落とすようになってから故障率は増加したとの話です。
  • プログラミングはパッチボード
ENIACはプログラム内蔵型ではなく、プログラムはパッチボードと呼ばれる配線パネルを人手で操作して行なわれました。フォンノイマンらはENIACをプログラム内蔵型に改良しようとしたようですが、そのプロジェクトは後のEDVACに託されました。
  • 10進計算
ENIACは現在のコンピュータのような2進計算ではなく、10進計算をする回路で構成されていました。デジタル式であることは違いありませんが、メモリ(レジスタ)は10個の状態をもつものでした。その分複雑になっていたわけです。
  • 大砲の弾道計算を行った
ENIACには利用目的がありました。第2次世界大戦中に作り始められたもので、大砲の弾道計算をする目的だったと言われています。
  • 巨大な設備
開発
  • ジョン・エッカートとジョン・モークリー
コンピュータの生みの親と言える人たちです。ENIACプロジェクト、EDVACプロジェクトの中心であり、実際の開発を行ないました。EDVAC開発で評価されず、特許を得ることができなかったため、独立し最初の商用コンピュータUNIAC-Iを開発しました。
  • 次のEDVACに開発の中心でもある
  • 軍事目的であるために公開されなかった
その他の世界最初?
  • ABCマシン
  • アタナソフ、ベイリー
  • 原理的に世界最初のコンピュータと考えられる
  • 特許問題などで話題
  • さまざまなアイディアが導入された
コンピュータの基本技術は1939年に設計されたアタナソフ、ベイリーのABCマシンにあったと言われます。しかし、ABCマシンは実際には実用レベルで稼働はしなかったという話です。
プログラム内蔵型ではなかったが、二進数計算や現代のDRAMに相当する再生式キャパシタなど斬新なアイディアが導入されている。



プログラム内蔵方式
  • 現代のコンピュータの最大の特徴
  • プログラムもデータとして扱う
  • プログラムを自己生成/増殖可能なしくみ
  • 誰の発明なのか?
プログラム内蔵方式
  • SSEM, Baby Mark I-- マンチェスター大学
    • Small-Scale Experimental Machine
    • ウィリアムス管による記憶装置のテストマシン
  • Manchestaer Mark I -- マンチェスター大学
    • Manchester Automatic Digital Machine(MADM)
  • EDSAC -- ケンブリッジ大学
ケンブリッジ大学では1946年にEDSAC(Electric Delay Storage Automatic Calicurator)の開発に乗り出し、1949年に運用を開始した。プログラム内蔵方式を採用し、本格的な運用を行った最初のコンピュータ
  • EDVACの設計論文(フォンノイマン)
プログラム内蔵方式は現代のコンピュータの基本となる方式である。ジョン・フォン・ノイマン氏が1944年にEDVACの提案書の中にプログラム内蔵方式(ストアドプログラム方式)を紹介していることから、ノイマン型と呼ばれることがあるが、ノイマン自身が提案者ではない。EDVACの設計も中心はENIACを設計したエッカートとモークリーによるところが多い。

世界最初の意味
  • それほどの意味はない
  • 誰もが考えていたアイディア
  • コンピュータは1人では作れないものだった
初期のコンピュータ
  • ロジック回路
    • リレー式(電気機械式)
    • 真空管式(純電子式)
    • パラメトロン式(電磁気式、日本で開発)
    • トランジスタ式(新時代へ)
  • 主記憶
    • 遅延線メモリ
    • 水銀柱メモリ
    • ブラウン管メモリ
    • 磁気コアメモリ(初期のコンピュータの主流)
    • 半導体メモリ
  • 補助記憶
    • 紙カード(入力用)
    • 紙テープ
    • 磁気テープ
    • 磁気ドラム
    • 磁気ディスク
真空管コンピュータ
  • 電子式による高速なスイッチング
  • 大量の発熱
  • 大掛かりな装置
  • 故障率の問題
    • 真空管のカソード電極を熱するヒータの断線など
    • 電圧を定格より低くして運用し、耐久性をあげた
  • 日本では富士フィルムのFUJICと東大のTACが作られた
    • 日本最初の真空管式コンピュータはFUJIC 1957年稼働
    • 2年後、レンズ設計から撤退し、後継機種は開発されず
    • レンズ設計を目的に岡崎文次氏が設計、制作
    • 真空管数 1,700本(ENIACに比べ一桁少ない合理設計)
リレー式コンピュータ
  • 電気機械式スイッチング
  • 比較的安価
  • 初期の商用コンピュータに用いられた
  • 日本最初のコンピュータはリレー式
    • FACOM100 日本最初のプログラム内蔵型リレー式コンピュータ 1954年
    • FACOM128 富士通最初の商用コンピュータ
現在日本のコンピュータのトップメーカである富士通は通信機器の会社であった。電話交換機ではリレーを使って交換を行っていたので、リレーの技術には実績があった。最初に作られたFACOM100,商用コンピュータのFACOM128はリレー式のプログラム内蔵型マシンであった。これらを設計した池田敏雄氏は初期の富士通のコンピュータ開発の中心として活躍し、富士通のIBM互換アーキテクチャの方向を決めていった。


パラメトロン式コンピュータ
  • 日本の後藤英一氏の発明
  • トランジスタに比べ低速であったため、姿を消すが日本独自の技術
  • 後にジョセフソン素子の結合による磁束量子パラメトロンを発明(まだ実用にはなっていない)

主記憶の技術
  • 水銀遅延管
水銀を満たしたパイプの中にデータを音波(パルス)を伝え、反対側から得られた音波を再度元に戻して伝えることにより、水銀管の中に情報を記録する技術。EDVAC、EDSACで使われた。ちなみにENIACはいわゆる主記憶はもっていなかった。
  • ウィリアムス管
マンチェスター大学のMark Iを開発したウィリアムスによって考案された。ブラウン管メモリとも呼ばれるように電子線を蛍光面に当てたときに蓄積される電荷によって記憶をする。メモリの内容を画面で直接確認できるという特徴をもっていた。東大のTACでも使われた。
  • 磁気コアメモリ
    • 初期の商用コンピュータの主流
    • IBM360をはじめとする多くのコンピュータに使われた
  • 半導体メモリ DRAM
    • IC時代, VLSI時代のマシンの主流
商用コンピュータの誕生
  • 1951年 UNIVC-I(レミントンランド社のちのユニシス社)
    • 世界最初の商用マシン
    • 水銀遅延管メモリ
    • 磁気テープ装置の採用
    • プログラム内蔵方式
    • UNIVersal Automatic Compuer
  • ペンシルベニア大学を辞めたモークリーとエッカートが開発
IBMのマシン
  • 1953年 IBMも商用マシンIBM701を開発
    • メモリにはウィリアムス管
    • パンチカード入力(UNIVAC-Iは磁気テープ)
  • 1954年 IBM 704
    • 磁気コアメモリの採用
    • インデックスレジスタを3本(アドレスの計算用レジスタ)
    • FORTRAN, LISP言語の開発
  • 1958年 IBM 709
    • IBM 704の改良
    • 704の命令をソフトウェアでエミュレート実行可
    • 間接アドレッシング
    • 10進命令
    • 36bitワード
トランジスタによるマシンの誕生
  • 1959年 IBM 7090
    • 第二世代のマシン
    • 709の後継の半導体デバイス機
  • 真空管からトランジスタへ
  • チャネルアーキテクチャ
    • データチャネル・アーキテクチャの採用
    • 専用プロセッサによるコマンド処理
    • DMAによる処理の先駆け
  • 36bitワード
  • 上位機種 7094, 7094II下位機種 7040, 7044
  • 7094IIでは命令のオーバーラップ(パイプライン処理の元)を実現

低価格マシンによる分業
  • IBM 1401
  • BCD計算マシン(10進計算)
  • 低価格なビジネスマシン
  • 入出力専用マシンとして、IBM 7090のサポート機として使われた
    • カードリーダや紙テープで読み込み、磁気テープに記録
    • 7090は磁気テープでデータを読み込み計算
    • 結果は磁気テープに出力
    • 1041は磁気テープを読み込みプリンタで印刷
  • 平行処理へ進化 IBM360へ
IBM System/360の誕生
  • 初の汎用コンピュータ
    • 従来
    • 7090シリーズは科学技術計算用
    • 7080シリーズはビジネス計算用
  • 科学計算にもビジネスにも利用できる汎用コンピュータのシリーズ化
  • 1964年 System360の誕生
  • 4モデル 40, 50, 65, 75
各モデルの規模
  • 性能と本体の価格
  • モデル40 1.6MHz 32KB〜256KB 225,000ドル
  • モデル50 2.0MHz 328KB〜256KB 555,000ドル
  • モデル65 5.0MHz 256KB〜1MB 1,2000,000ドル
  • モデル75 5.1MHz 256KB〜1MB 1,9000,000ドル
  • この他にもモデル20, 22, 30, ...
System/360の考え方
  • 共通アーキテクチャによるシリーズ化
  • OS/360の開発
  • ICによる第3世代コンピュータ
  • 1967年にはシェアの70%をIBMが占める
System/360からの流れ
  • System/370
  • S/390
  • System z (現在)
Ċ
Hideto Sazuka,
2009/10/01 7:54
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